LaTeXかWordか云々より理系学生ならLaTeXは必須だった(分野による)

理系の学生だとレポートや論文を書くのにLaTeXを使ったりしますね.

でもWordで書くよっていう人もいるし,こんなブログ記事もあります: 僕が TeX を使うのを辞めた3つの理由 - ++C++; // 管理人の日記

私は学部生の頃,Wordは使い慣れていたので,学習コストの高そうなLaTeXを覚えるべきか迷ったんですが,理系学生なら迷うまでもなくLaTeXの習得は必須でした.

ただし,情報系の一分野(よく数式を使う分野)ではそうだったという話です.他の分野ではWordが多数派のところもあるかもしれません.

なお,主に研究室で卒研する学生や修士などを場合を想定しています.

結論: 分野によるので,先輩や先生に聞いてLaTeXを使うか決めよう

理由1: その分野のデファクトスタンダードの文書フォーマット

先輩や先生に論文を見てもらうときは,LaTeX前提で体裁の指導をいただきました. この記号を出力するにはどうするとか,参考文献のフォーマットとか.

数式を書く時に,文字のフォントやスペース,二項演算子の扱いなど,細かいレイアウト上のお作法がありますが,そのあたりもLaTeX前提で説明されます.

中にはWordを使っている先輩もいましたが,数学寄りのことをやっている人はほぼLaTeXでした.

先生と論文を共著(というかほとんど先生が書いたけど)したことがありますが,その時も当然のようにLaTeXでした.

論文投稿先の学会でも,Conference Proceedings guidelines | Springer とかLaTeXのテンプレートが配布されています.Wordもありますが.

理由2: 特殊な数式を使う場合にLaTeXしか対応できない(たぶん)

LaTeXでは独自のコマンドを簡単に定義できます. しかし,Wordではできないようです.

下記リンク先で質問されていますが,オートコレクトでなんとかするか,LaTeXを使えという回答がついています.

Define custom equation with text shortcut in MS word equation editor - Super User

先生の論文のLaTeXソースを見ると,論文内で使う数式のお約束 (例えば,$\nat^{+}$で1以上の整数を表すとするときに,これを\pnatと定義) とか,用語を大量にコマンドで定義しているので, その機能が無しに論文を書くと思うと恐ろしくなります.

限定的な分野で使われるような特殊な数式だとLaTeXコマンドで定義されている場合が多々ありますが,それも使えないということです.

例えば下記のような型推論の規則とか.Wikipediaだと分数の\fracで書いていましたが,本当は分数じゃないしな...

f:id:kamocyc:20200105090415p:plain

理由3: 他に人がLaTeXを使っているのを見ると劣等感(人による)

周りの人がLaTeXで何やら理解できないコマンドを使って論文を書いているのに, 自分だけ初心者っぽいイメージのWord使っていると,劣等感を感じますね. (人による)

劣等感までいかなくても,論文フォーマットの共通言語が違うと,ときどき不便を感じそうです.

よくあるLaTeXのディスりポイント

LaTeXスキルなんてこの先使えないじゃん

将来も論文を書くなら使います(無い?).

また,LaTeXプログラミング言語であるので,情報系なら知っといて損はないです(たぶん).

まあ,コスパですね... ぶっちゃけLaTeXを極めようとすると,人生足りません.

バージョン管理とか校正とか

LaTeXソースはテキストです.Gitが使えます.

GitHubのプライベートリポジトリを使えば,Wordと同等以上に共同作業は便利です.

LaTeXはオワコンでは

参考: 文書作成環境の比較 - TeX Wiki

確かにLaTeXは古いし,Googleトレンドでも10年前から大幅に注目度が下がっています.

といっても,まだまだ分野のデファクトスタンダードLaTeXですし, まだ開発は続けられているし, 膨大なパッケージの資産があるし, フリーの有力な代替ソフトウェアも存在しないし, WordはUNIXじゃ動かないしからUNIXユーザは使えないし (言い訳っぽい...)

まあとりあえず,向こう数十年はLaTeXは健在だと思います.

それでもWordを使えると思う

タイトルで言っておいてなんですが,それでもWordで論文も書けると思います. 学会のサイトでWordテンプレートを配布していることでもわかります.

Wordの数式エディタが高機能

よく言われるLaTeXの利点として数式に強いということがありますが,最近のWordの数式機能はLaTeXにそこまで劣りません. むしろ,即座に入力結果を確認できるので,生産効率が高くなります.

ブログ: LaTeXとWordの文書作成効率の比較によると,熟練したLaTeXユーザでもWordのほうが生産性が高いということです.これがWYSIWYGの力なのか...

Wordの数式エディタでは,LaTeXがデフォルトで提供している機能は,まず可能です.(たぶん)

また,\intと入力すると積分記号になるとか,^0と入力すると上付き文字になるとかの機能もあるので, LaTeXより数式の入力が大変ということも無いです.

コマンドが定義できない点は,オートコレクトとかVBAとかフィールド機能とかで頑張ればなんとかできるんですかね.(わからない)

ただ,Wordで数式を書く場合,ページ数が数十ページとかなると動作がもっさりして,時々クラッシュしたりしました.(マシン環境にもよると思うが)

ただし適当にWordを使うな

Wordは初心者でも使いやすいです.しかし,Wordの機能や数式のレイアウトの作法をよく知らずにWordで論文を作成すると, 間違いなく見かけや保守性が酷いことになります.

例えば数式であれば,いつ文字をブロック体にしていつイタリック体にするかとか,Wordの機能であればスタイルの定義とか引用文献の使い方とかを知る必要があります.

Wordを使えば学習コスト0で論文を書けるというわけではないということです.

ていうか見栄えって大事なの?

少なくとも私の研究室ではかなり見栄えは注意されました. 論文を投稿した時の査読コメントでもレイアウトに問題があると指摘されます.

論文をacceptされたければ見栄えを整えるのは必須でしょう.

でもLaTeXは辛い

文法は目に悪いし,色々とレガシーだし,不必要に学習コストは高いし,レイアウト調整は大変だし,エラーの修正も大変です.

ここ (https://senooken.jp/asset/public/20141108/slide.pdf) にあることには同意で,将来的にはより良い代替ソフトができてほしいですが, デファクトスタンダードはなかなか変えられません.辛い.

まとめ

LaTeXは理系学生の必須スキル,と言いたいところですが,分野によるので,先輩や先生に聞いて学習するか決めるのがいいかもしれません.